前回は個人ごとの不自由さに沿った援助とはという視点でお話ししました。今回は、より一般的に、よりよいかかわり方とは?という視点でお話ししたいと思います。
よりよいかかわりについての具体的な話に入る前に、まずは下の図をご覧下さい。
これは、国際アルツハイマー病協会(ADI)が、認知症を患っても幸せに生きるために必要な権利に関して述べたものです。さらに、これを実現させるのは、家族、介護者、友人、医療・福祉専門職、地域社会、行政、つまり「認知症と共に生きる私」自身と、「認知症とともに生きる私」を取り巻くすべての人々である、としています。
ここで重要なのは「認知症とともに生きる私」が主役であるということです。
これは他の疾患であればごく当たり前のことのようにも思えますが、認知症という疾患のケアにおいては「認知症とともに生きる私」の主体性、権利擁護という観点に議論が及んだのは20世紀末になってからのことでした。
イギリスの心理学者であるトム・キットウッドは、それまでの認知症ケアの視点に大きな変革をもたらしました。彼が提唱した認知症ケアの視点は、パーソンセンタード・ケアと呼ばれ、文字通り「認知症とともに生きる私」が主体となるケアを意味しています。ここではその一部を説明する事とします(詳細は彼の著書を是非ご覧下さい)。
認知症の人が求める心理的な欲求にはいくつかの要素があり、これらを十分に発揮した状態であれば、認知症の人が主体的に楽しく幸せに生きることができる、としています。これらの要素の単語を反対語(例:心地よさ・安定性→不快さ・不安定)にして具体的に想像してみると、上の図をより理解しやすくなると思います。
話しがだんだんと難しくなってきたので、より具体的なよいかかわり方についてお話ししましょう。下の図をご覧下さい。
認知症のあるなしにかかわらず、他者からこのように接してもらえると、とてもうれしい気分になったり、安心した気分になれますよね。上の図を下の図でより具体的に説明します。
この中にはすぐに実践できそうなこともあれば、実践する人の練習や心理的なゆとりが必要とされるものもあります。すぐに100%達成を目指そうとすると大変ですので、ゆっくりだんだんと70パーセント程度を目指すつもりで臨んでみるのも良いでしょう。
下の図は脳の機能(記憶)の特徴から、より良いかかわりについて説明したものです。
今回は、よりよいかかわり方(心理・コミュニケーション編)とは?というお話しをしました。それと同じくらい重要なよりよいかかわり方として、体調管理という視点からもお話を次回はしたいと思います。
「もの忘れ」は早期発見・早期治療が重要であり、診断・治療のためには、地域のかかりつけ医師との情報共有が非常に重要です。ご家族や身近な方、またはご自身のもの忘れが気になるという方は、まずはかかりつけ医師にご相談下さい。
認知症疾患医療センター相談室 直通電話番号:086-427-3535
(認知症疾患医療センター CP阿部